やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

海帝第1巻、第2巻読了

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歴史の呼び声さんの記事で、星野先生があの鄭和を題材にした作品を描いていると知りました。
宗像教授異考録の連載終了とともにビックコミックから離れていたので、再び星野先生が歴史物の連載を始めていたことをようやく知った次第で。

星野先生が鄭和という謎に包まれた偉人の話に取り組むということで、これは間違いなく期待以上の作品だと思い、早速購入しました。
そして読了後の結論としては、その「期待以上」ということさえも裏切らない出来栄えの作品でした。
以下、ネタバレを含みますが、各巻の感想を書いてみたいと思います。

海帝第1巻

足利義満との謁見や、方孝孺の「燕賊簒位」などのフィクションとも言われるエピソードを交えながら、鄭和の偉丈夫ぶりが十二分に描かれていました。
主君である永楽帝との緊張感のあるやり取りも面白かったです。
明代の名君として名高い永楽帝ですが、本作品では簒奪を気にし、父帝洪武帝にも劣らない猜疑心でもって反対者を粛清する冷徹な面が強調されています。
鄭和に対しても燕王時代からの働きに信任を置きながらも、その才覚について警戒している面があり、その多面性がいかんなく描かれているとは思いました。

また、倭寇の描かれ方も良かったです。
鄭和の遠征に倭寇は欠かせないとは思っていましたが、倭寇を単なる海賊としてではなく、海路を切り開く者として射馬九郎や潭太、弖名などの個性的なキャラクターを介して活き活きと描かれているのが印象に残りました。

子を成せない宦官ゆえに生死にこだわり、先帝父娘をも密かに保護する鄭和ですが、その拘りが今後どのように繋がって行くかが見ものです。

海帝第2巻

後世、第1次航海と称されるインドへの航海の序章。
今回も永楽帝と鄭和の対峙に緊張感がありました。
ベトナムについては越南と占城という名前は知ってましたが、南北の国名であることは初めて認識しました。私が東南アジアの歴史に興味がないのがまる分かりですね。
ただベトナムが昔も南北に分かれていたというのが興味深かったです。第二次大戦後の南北ベトナムは冷戦の産物とだけで捉えていましたが、歴史的な背景もあったのかなとも思いました。
また、占城の屍頭蛮のくだりは宗像教授異考録を彷彿とさせました。

続いて舞台はマラッカ海峡へ。
昔から海賊が跋扈するところだったので、いよいよ海賊との戦いかと思ったのですが、賊は賊でも別の「賊」との戦いでした。
ただ、その戦いの中で倭寇の海に対するこだわりも感じさせられました。倭寇だけではなく海に生きる人々に共通するこだわりだとは思いますが。
こうして海に生きる人々を見ていると、我が国は海に隔てられた孤島ではなく海洋国家であるということがとても強く感じられました。
中国の明代の話ですが、我が国との関係も含め、とても面白い物語だと思いました。