香川県弁護士会の「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(以下、本条例)廃止を求める会長声明は、下記サイトに全文が掲載されています。
全文を読んでみましたが、特に本条例の18条2項について、日本国憲法だけでなく国際法である児童の権利に関する条約を侵害する恐れがあるとしています。
なお、本条例18条は下記の通りです。
ネット上では「素案」しか公開されていませんが、おそらくはこのまま条例として成立したと思われるので、そのまま掲載します。
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(抄)
(子どものスマートフォン使用等の制限)
第18条 保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。
2 保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が 60 分まで(学校等の休業日にあっては、 90 分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後 10 時までに 使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない。
この本条例18条2項について香川県弁護士会が侵害していると指摘したのは、日本国憲法第13条と国際法である児童の権利に関する条約第12条1項ならびに第31条です。
条文は下記の通りです。
日本国憲法(抄)
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
児童の権利に関する条約(抄)
第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。第31条
1 締約国は、休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める。2 締約国は、児童が文化的及び芸術的な生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進するものとし、文化的及び芸術的な活動並びにレクリエーション及び余暇の活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。
もともと法令に関しては素人である私個人としても本条例は違憲の疑いがあるとは思っていましたが、我が国の憲法に加えて国際法にも違反すると法曹界が意見表明したことは大きいと思います。
既に本条例については違憲として高松地裁に訴訟が提起されていますが、違憲判断は最高裁まで行かないと確定しませんし、そもそも我が国の「違憲立法審査権」は具体的な違憲事案に対して違憲審査を行う「付随的違憲審査制説」が法解釈の通説となっていますので、具体的な違憲事案がないと判断されれば門前払いの判決が出る公算が高いと思われます。
そのような中で、法令の専門家である法曹界がこのような声明を出したことは心強いですし、本条例を見直す契機になるのではと個人的に期待しています。
是非、香川県議会には再考して欲しいと思いますね。