やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

どれほど頼りなくても「政治のリーダーシップ」がなければシステムの効率化は図られないでしょう

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今回の特別定額給付金のオンライン申請が混乱した理由について、上記のような記事が出ていました。
非常に首肯できる部分が多かったですね。
行政府でシステムを構築、運用するに当たり、どのような壁があるかということが、今回の混乱によって明らかになったのではと思います。

各機関のデータベース同士がリンクできない憲法解釈と法令の壁

まず、行政府においては、国の機関であろうが地方自治体であろうが、職務執行に当たり憲法に違反する可能性や法令に違反する可能性は徹底的に避けなければならないというのが大前提としてあります。
行政府はあくまでも法令に基づいて政策を執行する機関ですから、これはまさにその通りだと思います。
今回のオンライン申請のシステム運用で問題になったのは、マイナンバーから家族の氏名などの情報を呼び出すことができず、結局は手入力をせざるを得ず誤りが頻発し、検証により多くの労力が必要になった点にありました。
ただ、これはかつて住基ネット違憲かどうかが争われた際に、最高裁が合憲と判断した根拠の一つである「個人情報の一元的な管理がなされないこと」がシステム構築の根本になった結果でもあります。
当事者ではない私たちから見れば、何とも迂遠な話だとは思いますが、行政府が憲法などに違反する可能性を避けたということであれば、それはそれでやむを得ない判断であったとは思います。

行政の新たなシステムの構築や更改には「政治のリーダーシップ」が必要

上記のように、行政府はあくまでも政策を執行する立場ですから、行政府自身が改善を行おうとするには自ずと限界があります。
そこで必要になるのが政治のリーダーシップ、すなわち法律の制定による立法府の積極的な関与です。
前述した「個人情報の一元的な管理がなされない」システムの改善を後押しする、また、地方自治体が給付金事務を行う上で障害になった「マイナンバーが利用できる法定事務」の範囲を広げる。これらは立法府による法律の制定がなければ行うことができません。
だからこそ、政治による積極的な関与が必要になるわけです。
ようやくマイナンバーと金融機関口座との紐付けに言及する政治家も出てきましたが、個人的にはまだまだ不十分だと思います。
大切なのは、行政府が効率良く職務執行を行えるシステムの大枠を立法府が定めることで、そのためには現在の行政府におけるワークフローなどを参考にして、憲法や関連法との整合性を取りつつ、政治の側でグランドデザインを描く必要があります。
多くの議論が必要ではありますが、少なくとも議員さんたちは高額な報酬を得ているわけですから、その報酬に見合った仕事はするべきでしょう。

システムの「司令塔」は必要不可欠ですね

また、今回のシステムに限らず、国や地方自治体でシステム構築や更改を行う場合、「司令塔」は必要不可欠だと思います。
民間企業では嫌と言うほど直面していますが、システムの導入は単に紙の介在を前提としたワークフローを置き換えるだけに留まりません。新たなシステムに連動したワークフローの改善も必要であり、ゆえに、単にシステムに精通した人だけでなく、ワークフローに介在する人の心理や機微に通じた人も必要になってきます。
当然、これらの人々を束ねるには、「単にシステムに詳しいだけの人」では務まりませんし、特に国の行政組織ほどの巨大なものになれば、システムについて幅広い知見を有する国務大臣が「司令塔」になるのは当然のことだと思います。
派閥順送りや論功行賞で選ばれた人物を「司令塔」に据えるのは論外ですね。

最後に。
今回の給付金オンライン申請の騒動で明らかになったのは、システム構築や改善に対する政治のリーダーシップの欠如だったと思います。
国や地方自治体ほどの巨大組織だからこそ、これからもシステムの構築や改善は続けて行く必要があります。だからこそ、今回の騒動でシステムの活用そのものが後退するのではなく、政治の積極的な関与によって、より効率的な職務執行が行えるようなシステム構築がなされるように願いたいですね。

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