以前からあった「哲学」と「宗教」への興味
昨年刊行されて評判になっていた本ですが、ようやく読み終えました。
手に取った理由は、以前から哲学と宗教というものに興味を持っていたからです。哲学はともかく、宗教に興味があると言えば、いささか胡散臭い目で見られるでしょうけどね。
ただ、個人的には昔から日本史、世界史を問わず歴史そのものに興味があって様々な歴史関係の本を読み、大学時代には経済学の勉強、そして社会人になってからは経営学の勉強などをやっている中で、50歳近くになってようやく、歴史や社会、経済を動かしている人間そのものの物の考え方について興味を抱いたのは事実ですしね。
また、我が国も含めて様々な国々の文化や歴史を知る上で、哲学と宗教の影響力を無視することも現実的ではありません。
そこで手頃な哲学や宗教全般の入門書を探していたのですが、世界の哲学や宗教を網羅的に記述しているという評判の本書の存在を知り、今回、購入して読んでみました。
「知の歴史」「知の流れ」を感じることが出来ました
世界史の授業などでは哲学者の名前や著作名などしか出てこないので、「この時代に、このような哲学者が現れて、このような著作を著した」ぐらいの事しか知らなかったのですが、その著名な哲学者ごとの事績や思想、著作の内容などが詳細に記されていて、とても読み応えがありました。
中でも圧巻だったのは、古代文明から脈々と受け継がれた「知の歴史」と「知の流れ」のダイナミックさでした。
特に、プラトンが創設したアカデメイアやアリストテレスが創設したリュケイオンで蓄積された「知」が、ササン朝ペルシア、イスラム帝国と翻訳・継承され、やがてスペインのイスラム国家である後ウマイヤ朝を通じてヨーロッパに伝わるという「知の流れ」は、その中で様々な人々を介して継承、翻訳、批判などが繰り返されるというダイナミズムあふれるもので、人類にとって本当の財産が「知」であるということを個人的にも再認識させられました。
また、イスラム教が実は非常に合理的な宗教であるという知見も眼から鱗でしたね。昨今ではISなどのイスラム原理主義者の行動ばかりがクローズアップされがちですが、イスラム教そのものは暴力とは無縁な宗教であることを認識できたことも収穫でした。
哲学と宗教についての格好の入門書だと思います
本書は、地域はヨーロッパからインドや中国まで、時代は古代から現代まで、地域的にも時間的にも非常に広汎にわたり網羅されている上に、全体を俯瞰的に見ることも可能な構成になっています。
500ページ近い大著ですが、気になる時代や地域をピックアップして読むことも可能ですし、参考文献や著者が推奨する文献も詳細に記されていますので、本書から他の本も合わせて読んで行くことで、より特定の哲学者の事績を掘り下げることも可能になっています。
哲学と宗教についての格好の入門書として、個人的には強くお勧めしたいですね。