やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

昭和天皇物語 第7巻と海帝 第6巻・第7巻

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いずれも昨年発売されていましたが、昨年秋からは帰宅してはすぐに爆睡するという日々ばかりでしたので、全然読めていませんでした。
ようやく読むことが出来たので少し感想を書いてみたいと思います。

昭和天皇物語 第7巻

いよいよ昭和天皇とタカの夫である鈴木貫太郎海軍大将が対面。
終戦時の内閣総理大臣としてあまりにも有名な鈴木貫太郎ですが、実は海軍の顕職のうちで軍令部長連合艦隊司令長官を務めた海軍の大物の一人でした。
最前線で指揮を取った際に猛訓練を施したことから鬼の貫太郎いわゆる「鬼貫」と呼ばれた猛将でしたが、この作品では温厚で昭和天皇への忠義溢れる人物として描かれています。
鈴木貫太郎自身は、次巻あたりから昭和天皇侍従長としての活躍が見られると思いますが、昭和天皇の信頼を勝ち得て行く過程がどのように描かれるかを楽しみにしています。

海帝 第6巻

黒死病という悲劇に見舞われた黒市党が鄭和に望みを託した理由が明かされた後、舞台は古里(カリカット)の手前の溜山(モルディブ)国へ。
驚いたのは艦隊戦の中でこれでもかと使われる火薬の量でした。
一般的なイメージからすれば、火薬を使った鉄砲や大砲は西洋のイメージが強かったのですが、鄭和の遠征の中でこのような火薬が飛び交う戦いを見ることが出来たのは新鮮でした。

モルディブでの戦いの後、舞台は第1次航海の目的地である古里(カリカット)へ。
そこで鄭和チベットの高僧と出会います。
高僧との問答は、これからの鄭和の歩みを暗示しているように個人的には感じました。
他人のために助力を惜しまないゆえに、自らを追い込んでいるように見える鄭和ですが、だからこそ多くの人がついて来るのかなとも思います。
問題は永楽帝鄭和の為人をどう見ているかですね。
歴史上では永楽帝の寵臣であったと描かれる鄭和ですが、この作品で描かれる永楽帝との緊張に満ちた主従関係は物語上の演出ではあろうと思いますが、とても新鮮に感じました。

海帝 第7巻

古里(カリカット)への遠征を終え、主君永楽帝へ報告に出向いた鄭和
気がかりだったのは、鄭和の行動の「真の目的」が永楽帝の前で明らかになることでしたが、結果は意外なことに。
この、鄭和の「真の目的」を把握していながらの永楽帝の行動は、もちろん鄭和を有用な人材とみなしていたことはあるでしょうが、皇帝即位から年月が経ち、ある程度明国そのものを掌握した自信が永楽帝に備わったことの現れでないかとは思いました。

そして、この作品のタイトルとなった「海帝」の意味も明らかに。
正史の虚と実を含めて、これまで判明した史実を踏まえた星野先生の作品の描き方は壮大で、読んでいて本当に圧倒されてしまいます。
いよいよ第2次航海が描かれ始めましたが、鄭和自身はもちろん、鄭和に関わった黒市党などの人々の行末も含め、星野先生が描くこれからの「航海」をとても楽しみにしています。