やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

善教将大著「維新支持の分析ーポピュリズムか,有権者の合理性か」

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本書は2018年12月に上梓された書籍で、大阪で維新の会(以下、維新)が支持されている理由と第1回の大阪都構想住民投票の結果が反対多数となった理由とを、単なる印象論に留めずに実証的な分析を交えて要因を明らかにしたものです。

今さらながら本書を読もうと思ったのは、先月末に行われた衆議院議員総選挙で維新が予想以上に大躍進したことがきっかけです。
この衆院選の結果は、関西、特に大阪において維新が確固たる地位を築いた結果とも言えますが、この事実は単なる風頼みやポピュリズムによる躍進だとは個人的にはどうしても思えませんでした。
そこで、従来のポピュリズム政党としての維新評とは異なるアプローチで大阪における維新支持の分析を行ったとされる本書を改めて読むことで維新支持の背景を探ってみようと思いました。

本書では、維新支持の特徴としてポピュリズムではなく次の2点を指摘しています。
1つ目は、大阪の人々の多くが維新を「大阪」の代表者とみなしている点。
2つ目は、大阪における維新への支持も確固としたものではない点です。
いずれも大阪に住む私としては首肯できるものでした。

1つ目については、2000年前後に大阪が経済的に不振を極め、大阪府大阪市が負債を積み上げて行く中で、本気で大阪が抱える諸問題を解決しようとする姿勢が既成政党の地方議員たちには見られなかったことを個人的に覚えていた点です。
何とかしようとする議員でも、せいぜい中央とのパイプを誇示してお金を引っ張ってこようとしていたぐらいではなかったでしょうか。
そのような中で2008年に大阪府知事に就任した橋下徹氏が代表となって2010年に結成された維新は真っ正面から大阪が抱える課題を解決しようとする姿勢を見せましたし、実際に全てではありませんが解決をし続けてきました。
そこに本書で述べられているような、維新を「大阪」の代表者とみなす流れができたのかなと個人的には思っています。

2つ目については、これは維新の代表者だった橋下氏自身が「ふわっとした民意」という言葉で実際に表現しています。裏を返せば、ドライな支持に支えられていることを知悉しているのは維新自身なのではないかとも思いますね。
だからこそ最近でも、文書通信交通滞在費を巡って橋下氏と足立氏(足立康史衆議院議員)がバトルを繰り広げたのかもしれません。
有権者の感覚と外れるようなことをすれば、簡単に支持が離れるという危機感を維新の関係者は常に持っているとも言えるかもしれませんね。

話が本書から外れましたが。
結局、維新の支持は熱狂的なポピュリズムが根底にあるわけではないということが実証分析から数値で可視化できたのは大きな収穫でした。
印象論としてのポピュリズム政党像よりは、はるかに現実味のある維新像だと思いました。
本来であれば、こう言った分析を維新と対立する既成政党の方が活用すべきだと思うんですけどね。自民党の補完勢力やゆ党、ポピュリズム政党などと批判するだけではなく。
まあ、もったいないと思いますね。