今週のお題「好きな小説」
私の場合は田中芳樹氏の銀河英雄伝説ですね。
高校時代に初めて読んでから、そこは全然変わらないです。
群像劇としての魅力
銀河英雄伝説は、カテゴリーとしてはスペースオペラに分類されますが、個人的には宇宙を舞台にした群像劇だと思っています。
主役は「常勝の天才」のラインハルトと「不敗の魔術師」のヤンですが、彼ら以外にも個性的で魅力的な登場人物が数多く出ており、それぞれの生き様が詳細に描かれているのが魅力です。
敵役も当然出てきますが、単純な悪党として描かれるのではなく、矛盾を抱える等身大の人間として描かれているのもリアリティを感じますね。
また、「人は死んだら生き返らない」という現実を終始一貫徹底している作品でもあります。
作者の田中芳樹氏は「皆殺しの田中」の異名がある通り、この作品でも実にたくさんの登場人物が亡くなりますが、一切生き返ってきません。
この辺りはシビアですが、それだけにリアリティは感じさせられますね。
作品構成としては対称性の美しさを感じます
銀河英雄伝説ではまた、対称性の美しさも感じます。
専制国家の銀河帝国と民主国家の自由惑星同盟はもちろん、同じ王朝の開祖でありながらルドルフとラインハルトも対称的です。
また、ゴールデンバウム王朝では皇帝の妻は「皇后」ですがローエングラム王朝では「皇妃」ですし、同じ国舅でもノイエ・シュタウフェン公ヨアヒムとマリーンドルフ伯フランツもまた対照的ですね。
主役級の登場人物でも、ラインハルトの後を継ぐのは実子である一方でヤンの後を継いだのは養子である点も、専制国家と民主国家と同様の対称性を感じました。
銀河英雄伝説の場合は、複雑な群像劇にこの対称性の美しさを絡ませることで、物語の流れを明確にしているのかなと個人的には感じています。
なかなか上手く表現できないのがもどかしいですが。
小説を読んで涙を流した初めての作品でした
最後に何よりも小説を読んで涙を流した初めての作品でした。
特に8巻がそうでした。
セリフのあるアニメやドラマや絵が描かれる漫画とは異なり、小説はただ文字が延々と連なっているだけなのですが、それでもこれほど感情を揺さぶられたことにとても驚いたことを今でも覚えています。
それだけ引き込まれる作品だったということでしょう。
今でも時折、本棚から愛蔵版を出して読みふけっている時があります。
人が紡いだ作品である以上、不満な所もないわけではありませんが、それでも個人的には何回読んでも楽しめる作品ですね。
出会えて良かった小説だと、今も思っています。