昭和天皇物語 第14巻
かなり前に発売されていましたが、ようやく購入し読み終えました。
時間軸はノモンハン事件から日独伊三国同盟の締結まで。
陸軍が推し進める三国同盟を止めようと、各人の努力する様が描かれていましたが、結局は史実通りの流れとなることに。
特に近衛文麿の無責任ぶりには、呆れるを通り越して怒りすら覚えました。
昭和天皇にも見透かされているように、決して自分自身でリスクを取らないのは、政治家としては無能としか言いようがないですね。
西園寺公が話した「五目飯のような政治家」という評価は確か海軍の井上成美の評価だったと記憶していますが、言い得て妙だと思いました。
一方で三国同盟締結後の米英との緊張を見越して、対米戦争への計画を練る山本五十六。
自分自身が望まない流れの中で、最悪の事態を想定して布石を打たなければならないのはとても辛いことだと思います。
そしてそれは、昭和天皇御自身もそうだったのではないかとも思いますね。
昭和天皇物語 第15巻
昭和天皇の弟宮、秩父宮に病魔の影が。
かつては天皇親政で昭和天皇と対立した秩父宮ですが、この病気さえなければ歳が近い弟宮として昭和天皇の代弁者となったのではと個人的には思います。
もちろん、皇族軍人としての限界はあったかもしれませんが。
陸軍の動きは、失策続きの事態を何とか挽回しようと屋上屋を架しているように見えました。
まさに組織の硬直化が極まれりといったところでしょう。
一方の海軍は一枚岩でなかったのが致命的だと思いました。
個々人では陸軍を抑え込もうと行動する者がいましたが、多数派になれなかったのが残念だと思いました。
様々な苦悩を抱えながらも、立憲君主としての分は守ろうとする昭和天皇。
いっそ親政を行った方が良いのではと一瞬思ったりもしましたが、それは天皇ご自身には絶対できなかったことでしょうし、かえって軍部の反発を招いて退位に追い込まれるか身の危険もあっただろうと思います。
天皇の意をくむことができる重臣たちは動けない一方で、天皇の意に沿わないことばかりを繰り返す重臣が幅をきかせる現状はわが国にとっても不幸だったと思います。
そしてその結果が、次巻から始まる太平洋戦争の惨禍なのだろうと思いますね。