やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

銀色の路 ―半田銀山異聞― 上・下巻

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ネタバレ注意
新刊の内容に触れている文言があります。ネタバレになる可能性もあるのでご注意ください。

単行本化を待って購入し、一気に読ませてもらいました。
安彦先生流の五代友厚像を十二分に堪能できる作品でした。

舞台は明治7年(1874年)の福島県・半田銀山。半田銀山の経営を始めた五代友厚と、半田銀山に関わる早田家をはじめとする地元の人々の奮闘が中心に描かれています。
維新後、朝敵の地とされた東北の人々のルサンチマンが余すところなく描かれており、実に安彦先生らしい作品になっていました。

『王道の狗』でなじみの武田惣角が再び登場したのもうれしかったですね。また、知る人ぞ知る実在の人物がさりげなく登場する描写も安彦作品ならではだと思いました。

上巻では大阪会議についても触れられており、維新三傑のうちの二人、大久保利通と木戸孝允も描かれていました。
財界と政界の両方で八面六臂の活躍を見せる五代友厚を語る上で、欠かせない場面だったと思いますね。

下巻では、命を削りながら理想を追い求める五代友厚と、過去と向き合うことを決意した中村直次郎の姿が印象的でした。
西郷頼母が登場したのは武田惣角との関係もあったのでしょうが、生き長らえていることへの苦しみという共通の心情をより強調する意図もあったのかもしれません。
そのような重い物語の一方で、安彦先生のご先祖をさらりと登場させるあたりも、いかにも先生らしい演出だと思いました。

あとがきでは五代友厚に対する悪評にも触れられていましたが、大阪の人間としては、五代友厚が大阪の恩人であるという評価は変わりません。
大阪取引所や大阪商工会議所、そして大阪公立大学の源流の一つである大阪商業講習所の設立に尽力し、それぞれで銅像が建てられていることがその証しでしょう。
また、大阪の歴史を調べれば調べるほど、五代友厚が大阪を拠点に事業を行っていなければ、その後の「大大阪」の発展はなかったのではないかと感じます。

そんな大阪の恩人である五代友厚を、安彦先生が描いてくださったことは何よりうれしかったですね。