やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

政令市の限界と大阪都構想で示される新たな大都市行政について

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日本経済新聞で相次いで政令指定都市(以下、政令市)に関する記事が掲載されました。
これらの記事は有料記事ですが、無料会員になれは月10記事まで無料で読むことが出来ます。メールはたくさんやってきますが。(笑)
ただ、これらの記事は、個人的には大都市が抱える行政の問題と政令市の財政基盤の脆弱さ、そして、大都市行政の新たな制度としての大阪都構想特別区(以下、大阪4区)などが比較的公平に記述されていて好感が持てました。
そこで、これらの記事を念頭に置きつつ、政令市の限界と大阪都構想で示される新たな大都市行政について、少し書いてみたいと思います。

政令市は都道府県と大都市との妥協の産物

そもそも政令市は、1956(昭和31)年の地方自治法の改正によって誕生し、同年に大阪、名古屋、京都、横浜、神戸の五大都市が指定されました。
もともと五大都市は地方自治法に定められていた特別市となることを望んでいましたが(現在は条文から削除)、府県の抵抗が頑強だったため、妥協の産物として府県から限定的な広域行政に関する権限が委譲された政令市制度が創設されたわけです。
この政令市になることで、五大都市は一般市よりも大きな権限を持つことになりました。
しかし、大きくなったのは権限だけでした。

一般市と変わらない税収基盤の政令

権限は大きくなりましたが、政令市に与えられた税収基盤は一般市とあまり変わりませんでした。
市税としては、市民税、固定資産税、軽自動車税がありますが、これらは一般市と何ら変わりません。
他に都市計画税事業所税がありますが、都市計画税はもともと政令市に関係なく市街化区域内に存在する土地、建物に対して市町村が条例により課税するものですし、事業所税は確かに全ての政令市が課税していますが、中核市でも課税しているところがありますし、政令市固有の税とは言えません。
こうして見てみると、政令市と一般市とで税収基盤に大差が無いことがよく分かると思います。
強いて言えば、宝くじの収益金は政令市の貴重な財源ですが、これが政令市の歳入を支えているとは言えないと個人的には思います。
税収基盤が一般市も変わらない一方で、道府県に匹敵する権限を持つとなれば、財政負担が大きくなるのは自明の理でしょう

今まで税収基盤の弱さが露呈しなかった理由

では、これまでなぜ政令市の税収基盤の弱さが露呈しなかったのでしょうか?
それは、特に五大都市に言えることですが、企業集積が進んでいたことから、もともと法人市民税の税収が多かったという事情があります。
加えて、当初は高度経済成長による右肩上がりの税収増があったため、より目立たなかったというわけですね。
しかし、今では経済成長も鈍化したため、税収基盤の弱さが顕在化してきました。

各地の政令市で厳しい財政状況が浮き彫りになっています。
特に堺市の財政状況は危機的ですね。なぜマスメディアが報道しないのか不思議なくらいです。
コロナ禍のせいもあるかもしれませんが、ここで言えるのは、政令市と言えども法人税収が減少すれば一般市と同様に財政危機に陥るという事実ですね。
なまじ広域行政の権限を持っているだけに歳出も多くなり、余計に財政の厳しさが増すというわけです。

新たな大都市行政の形としての大阪都構想特別区制度

大阪4区はその政令市固有の問題を解決する手段として考え出されました。
広域行政を府に委ね、4つの特別区が身近な住民サービスを担う体制で大阪中心部を活性化させる試みです。
特筆すべきなのは、大阪4区には大都市法(大都市地域における特別区の設置に関する法律)に準拠した「特別区設置協定書」により中核市相当の権限が付与されている点です。
ここが地方自治法に準拠した東京23区との違いです。

大阪4区の権限イメージ

上図は「特別区設置協定書」の資料として出された大阪4区の権限イメージです。(資料5 特別区制度(案) 03 事務分担)
ご覧の通り、東京23区よりも多くの権限が付与されています。
1つの政令市を4つの中核市相当の特別区に分割し、身近な住民サービスを担わせる。
これもまた、大都市行政の一つの考え方であると個人的には思います。

どのようなものであっても、100%の行政制度はありません。
あるとすれば、どの行政制度がより有用かと言う話でしょう。
政令市と言えども、これまで我が国で考え出された行政制度の一つであり、様々な問題点があります。
それら問題点をどのように解決して行くか。
財政危機の政令市が出てきている以上、大阪4区以外にも抜本的な改善策が策定される必要があるのではないかと思いますね。