やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

人生に影響を与えた1冊の小説

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今週のお題は「人生に影響を与えた1冊」
それならば、私の場合ははっきりしています。
田中芳樹さんが著した銀河英雄伝説です。
スペースオペラとしてはあまりにも有名です。

遠い未来の人類普遍の物語

この作品は、人類が地球から進出した銀河系が舞台で、慢性的な戦争状態にあった専制政治下の銀河帝国(帝国)と民主主義を標榜する自由惑星同盟(同盟)にあって、帝国の「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと同盟の「不敗の魔術師ヤン・ウェンリーが知略を尽くした戦いを繰り広げる物語です。
ただ、遠い未来の話でも、SFにありがちなアンドロイドや異星人などは登場せず、あくまでも地球人類の子孫だけが登場する物語で、まさに銀河を舞台にした国家の興亡史とも言えると思います。

清廉な独裁政治と腐敗した民主政治との対比

この作品で考えさせられるのは、清廉な独裁者によって治められる帝国と衆愚政治と堕した同盟との対比で、一見すると清廉な独裁政治の方が効率的に見える点です。
しかし、非効率でも衆愚政治に堕する危険性があっても、民主主義というものが人類にとって大切な考え方の一つであることを、この作品は示しています。
端的に示しているのは下記の文章だと思います。

たったこれだけのことが実現するのに、五〇〇年の歳月と、数千億の人命が必要だったのだ。銀河連邦の末期に、市民たちが政治に倦まなかったら。ただひとりの人間に、無制限の権力を与えることがいかに危険であるか、彼らが気づいていたら。市民の権利より国家の権威が優先されるような政治体制が、どれほど多くの人を不幸にするか、過去の歴史から学びえていたら。人類は、よりすくない犠牲と負担で、より中庸と調和をえた政治体制を、より早く実現しえたであろうに。「政治なんておれたちに関係ないよ」という一言は、それを発した者に対する権利剥奪の宣告である。政治は、それを蔑視した者に対して、かならず復讐するのだ。ごくわずかな想像力があれば、それがわかるはずなのに。
銀河英雄伝説第10巻・落日篇より

人は楽をしたいと誰もが思いますし、面倒な事は他人に押し付けたいと思う事もあるとは思います。
しかし、政治の世界でそれを行なってしまうと、極論を言えば生殺与奪の権利を奪われても文句は言えないのだと言う事を、この作品を高校生時代に読んで強く感じました。
だからこそ、今でも個人的には選挙を棄権したことはありませんし、政治に関心を持つのは民主主義国家の国民としては義務であるとさえ思っています。

個性的なキャラクター

お固い話は置いておいて、主役以外にも個性的なキャラクターが数多く登場するのもこの作品の魅力ですね。
帝国では、公正明大なミッターマイヤーや漁色家のロイエンタール、冷徹なオーベルシュタインなど。同盟では、不敵なシェーンコップや後方管理の達人キャゼルヌ、若き革命家を彷彿とさせるアッテンボローなど、数え上げたらきりがありません。
これらのキャラクターの一人の行動を読んで、その心情に想いを馳せることも、この作品の楽しみ方の一つです。

フィクションの中のリアリティ

この作品自体はもちろんフィクションですが、リアリティが感じさせられる所も随所に見られ、それらもこの作品の魅力を高めていると思います。特にキャラクターたちの心情描写のリアリティは秀逸ですね。
ただ、平面的な艦隊配置や司令官の指揮権が幕僚に移行するなどといった現実ではありえない描写などがあるため、批判を受けている部分はあります。
しかし、フィクションを構成するにあたって、全てにおいて現実に即した描写をすることは不可能ですし、それ自体がこの作品の魅力を減らしているとは思えないですね。
むしろ、フィクションの中でうまくリアリティを取り込んでいるという印象は持ってます。

まずは原作を

この作品は、過去にアニメや演劇にもなり、そちらの方で知っている人も多いと思います。
また、再来年に再びアニメ化されることにもなっています。
ですが、それだけにまずはこの原作を最初に読んで欲しいと思います。
序章さえ乗り越えれば、後は割にすんなりと読めますし、小説が苦手な方でも読みやすいと思います。
ちなみに、私は第8巻で涙を流しました………。

話がそれましたが。
この作品は、私の歴史観や政治観、大げさに書けば人生観を大きく変えたのは事実です。
今でも時間があれば、何度でも読み返していますし、この作品に出会えて本当に良かったと今でも思っていますね。

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)