やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

紫堂恭子先生の「辺境警備」は今でも読み返しますね

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今週のお題「一気読みした漫画」

一気読みをした漫画となると、そもそも読み始めた時点でそれなりの巻数が発刊されていることが前提条件になります。
たいていは、連載開始後まもなくに評判を聞いて読みはじめることが多かったので、個人的にはある程度巻数が発刊されてから一気に読んだ作品と言うものは意外に少なかったですね。

ただ、全く一気読みをしたことが無かったわけではありませんでした。
その数少ない作品の一つが紫堂恭子先生の「辺境警備」です。
読み始めた経緯は、もともと紫堂先生の別の作品であった「グラン・ローヴァ物語」をリアルタイムで読んでいた時に、既に完結した別の作品があると言う話を聞いて興味を抱いて購入したのがきっかけでした。

で、読み始めたらはまって一気に読んでしまった次第で。

あらすじは、大国ルウムの北方の今では平穏そのものの辺境の地に、都の軍団長から左遷されてこの地の守備隊の隊長に赴任した「隊長さん」サウル・カダフが、部下の9人の「兵隊さん」と近くの神殿に赴任していた「神官さん」ジェニアス・ローサイをはじめ、近隣の村人たちを交えて、軍の守備隊のイメージからは程遠い愉快な日常生活を繰り広げる話です。
作品の世界は指輪物語などを彷彿とさせるファンタジー世界ですが、紫堂先生独特の含蓄に富んだ世界観が楽しめますし、登場人物も「兵隊さん」や村人たちなどを除けば、一癖も二癖もある人物のオンパレードで、ぐいぐいと作品世界に引き込まれます。

中でも個人的には「隊長さん」の年長者ぶりが強く印象に残りました。
まあ、「隊長さん」はスケベでなまけもので小悪党な俗物なのですが、一方で様々な「世間」というものを経験してきたが故に、純粋な若者たちへの良きサポート役としての年長者ぶりはとても際立っていました。
特に作品後半はそれが遺憾なく発揮されますし、そのことが「神官さん」たちを精神的に救うことにも繋がったのだろうなとは思いました。

「あなたが言わずにいることをなんでわたしがたずねる必要があるんですかな?」

辺境に来た経緯を聞かないことに対する「神官さん」の問いに「隊長さん」が答えた台詞です。
たった一言ですが、個人的にはこの台詞に「隊長さん」の大人としての人となりが現れていると思いました。
「隊長さん」にもそれなりに出世や名誉や金銭など人並みの欲というものはあったと思うのですが、そんな目先のものに囚われずに飄々と人生を過ごしていく生き方は、少なくとも個人的にはとても憧れに感じるものがありましたね。

まあ、30年ほど前の作品をこのように今でも思い返すことが出来たのは、一気読みしたからこそかもしれませんね。
今でも手元に置いて読み返すことがありますし。
一気読みをしようと思ったのは、単に面白いからではなく、読み手である私に何か強烈なメッセージを与えたからこそなのかもしれませんね。