本書は今年の2月に発売されました。
ちょうど大河ドラマ「どうする家康」が放送されているので、時宜を得た著書とも言えますね。
あの磯田道史氏が執筆したということで興味が湧いたので、遅まきながら読んでみました。
話はそれますが、現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」は感想を保留にして見続けています。
大河ドラマらしからぬストーリーの軽さを感じる時もあるのですが、史実には出ていない部分の演出にオリジナリティがあってなかなか興味を引く部分はありますし。
最後まで見てから感想は書きたいと思います。
話を戻して。
徳川家康という人物は言うまでもなく二百五十年にわたるパクス・トクガワーナをもたらした英傑ですが、一方で天下人へののしあがり方やその後の統治手法で批判も多い人物です。
ですが個人的には、これまでの歴史上で欠点のない為政者などはいないと思っていますし、だからこそ人物批判よりもその人物が成したこととその結果の功罪を冷静に見つめることが大切だと思っています。
それこそが「歴史を学ぶ」ということだと思いますしね。
本書を読んで強く感じたのは、徳川家康という人物は本当に運の強い人物だったということでした。
そうでなければ三河の小さな国人領主から天下人へのし上がることはできなかったでしょうしね。
ただ、その運の強さも、自分自身の失敗と他者の成功と失敗から謙虚に学び続けたからこそ招き寄せたものであるとも思いました。
それは最終的に天下人になるまで、ずっと他者の風下に立たなければならなかったからこその生き方だったのかもしれません。
本書では家康の本拠地であった三河の地政学的な位置や彼が接してきた今川義元や織田信長、武田信玄や豊臣秀吉がやってきたことにスポットを当てて、それらから家康の学び取った点が記されていました。
最新の研究も交えたものですが、文章は比較的平易で、磯田氏らしいと思いました。
個人的には豊臣秀吉との関わりにもう少し紙面を割いてほしかったですが、そこはページ数の都合があったのかもしれないですね。
リアルタイムで「どうする家康」を見ている人はもちろん、徳川家康という人物を知っておきたいという人にはお勧めできる入門書だと思いました。