やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

大阪ダブル選挙とこれからの地方政治について

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はじめに

大阪ダブル選挙での大阪維新の会(以下、維新)の圧勝からほぼ三週間が経ちました。
この結果については、メディアやネット等では様々な意見が論じられていますが、結構、大阪の実情を知らずに論じられていることが多いのではないかと個人的には思っています。
破壊的な改革が支持される背景には必ず、現状に対する一定の人々の強い不満があります。それが結果として創造へ向かうにしても破壊へ向かうにしても、その強い不満を分析しなければ、問題の根源を探り当てることは難しいと思います。
そこで今回は、その強い不満がいかにして維新の勝利へと結びついていったのかを、長文にはなりますが個人的に考えてみたいと思います。

維新勝利の要因

今回の維新勝利の要因ですが。

  1. 対案なき既成政党の自滅
  2. 過去の「無駄遣い」に対する嫌悪感
  3. 「分かりやすい」維新の成果

以上の三つが挙げられると個人的には考えます。

対案なき既成政党の自滅

まずは、国政において決定的に対立している自民党民主党共産党が反維新という一点だけで手を組んだということ、これが第一の要因にして最大の要因であると思います。
国政において対立する政党が、地方政治においては協調する事例は、各地の相乗り首長選挙の例でもよくありますし、現に前回の大阪都構想住民投票では、維新以外の既成政党は一致団結して対抗しました。
しかしながら、今回のダブル選挙で問われたのは維新の府政・市政に対する政策そのものでした。
維新の府政・市政や大阪都構想に反対する大阪府民や大阪市民が望んでいたのは、それらの政策に代わるこれからの大阪の道筋そのものだったはずですが、それに対して、既成政党各党は統一したものを対案として出すことが出来ませんでした。また、反維新側の府知事候補と市長候補との政策の擦り合わせも出来ていませんでした。これでは、市・府民にも響くものは少なかったように思います。

この橋下市長のツイートが、全てを物語っていると思いましたね。
統一した選挙戦略もなく、体系立った維新の政策に対し対案も出せない。
維新が「野合」という言葉を使ってその足並みの乱れを批判していましたが、まさにその通りであったと思います。

過去の「無駄遣い」に対する怒り

次に、過去の「無駄遣い」に対して府民・市民の間に怒りがあったのも大きいと思います。

槍玉に挙げられたのは、大阪府大阪市双方が競って建てた重複する施設であり、更に大阪市において収益を出すことを目指して建てられたホテルやレジャー施設等ですが、これらが生み出した損失やこれらの関連法人に多くの職員が天下っていたという事実がこの八年の大阪の政治の中で白日の下にさらされました。
これらについて、ここに至るまで放置してきたのは既成政党の議員たちであるという批判が、維新側からなされていました。
これらに対する怒りも、今回の投票行動に繋がったのではないかと思いますね。
また、その過去の大阪を否定的なものとして訴えた維新の選挙活動も功を奏したと思います。

「分かりやすい」維新の成果

そして、橋下府政の四年と松井府政・橋下市政の四年で、「分かりやすい」成果が出ていたのも大きいと思います。
地下鉄はトイレがきれいになり、売店も外部委託で品揃えも良くなった上に電子マネーも利用できるようになるなど、利便性が高まりました。
フェンスに覆われて閑古鳥が鳴いていた天王寺公園も、てんしばに生まれ変わって人々で賑わうようになりました。
泉北高速鉄道の売却で泉北地区から難波方面への運賃も安くなりましたし、北大阪急行箕面延伸やモノレールの東大阪延伸など、これまでほとんど前進しなかった鉄道などの延伸計画も動き出しています。
保証協会の統合も特筆すべきでしょう。これまで大阪府の保証協会と大阪市の保証協会の双方を利用していた場合、協会をまたがっての借入の一本化は不可能だったのですが、統合によってそれも可能になりました。中小企業の資金繰りにも良い影響を与えていると思います。

その影で、多くの補助の打ち切りなどがあったのも事実ですが、一方で、目に見えて成果が市・府民の前に示されたのは大きいと思います。
また、首長や議員が報酬カットなどで、身を切る姿勢を見せたのも良かったと思います。今の府議の報酬は、私の地元の東大阪市議よりも少ないそうですし。
確かに維新、特に橋下市長の言動や手法には批判される点もあるとは思いますが、少なくとも結果は出している部分もあり、この点も投票行動には影響したとは思いますね。

国政と地方政治と同一視することへの違和感

以上、今回のダブル選挙について考えてきましたが、これらを通じて感じたのは、国政と地方政治とを同一視することへの違和感でした。
特に橋下市長の国政における言動は、主に左寄りの人々に批判されていますが、それと地方政治で必要とされていることはかなり異なると思います。
地方政治において大事なのは、いかに限られた予算を効率良く使って、地方をより良い方向へと持っていくかということではないかと思います。
確かに、地方交付税交付金や国庫支出金など財政面で地方は国に従属しています。首長は国への陳情に奔走するのが現状で、地方議員は国会議員の下働きのような存在、それが実態であるのかもしれません。
しかし、それらに甘んじずに国政政党を作って国を動かして法令を作らせたりしてきたのが維新だというのは事実だと思います。そうでなければ、大都市地域特別区設置法などは成立しなかったと思いますしね。
いかに国からお金を引っ張ってくるかではなく、地方で必要なことを主体的に考えて、国に必要なものを提案する、これこそが本当の地方自治の形ではないかと思うわけです。

リップサービスから政策の提案へ

また、今回のダブル選挙は、利益誘導よりも政策の提案が有効であることも明確に証明したと思います。
選挙において、何でもやりますなどというリップサービスはいくらでも出来るでしょうが、残念ながら、使える予算には限りがあります。
限られた予算で何かをしようとするならば、優先順位の低い補助金等をカットするなどと言った厳しい事もやらなければならないのは自明の理であるわけで、そこが政策の提案になると思います。
ただ、その政策の提案に対して、反対だけで対案を出さなければ結局は現状維持でしかなく、何も進まないんですよね。現状維持というのは、結局は「保守」なわけで「革新」でも何でもないと思います。
結局これからは、一つの政策に対して反対をする場合は、その対案を示して反対しなければ意味がありませんし、支持も広がらないと思います。それを今回のダブル選挙は示したのではないかと思います。
この流れは、地方政治は言うに及ばず、国政にも波及するのではないかと思いますね。

最後に

長くなりましたが、今回のダブル選挙で注目すべき点は上記のように多岐に渡ると思います。
ただ今回、橋下市長が政界を「引退」するので、その後の維新については未知数ですが、今の流れが続いて欲しいと一有権者としては思います。

もちろん維新の政策が100%正しいわけではありません。
大切なのは、投票などを通じて有権者が常に政策を選択する姿勢だと思います。
それを大阪の有権者が続けることが出来れば、案外、これからの大阪も色々と面白いことが起きるのではないかと思っています。

まあ、これが国政にも波及すればもっと面白くなるとも思いますが。
それはそれで、かなり騒がしくなるとは思いますが、現状維持で停滞しているよりははるかにマシだと、個人的には思いますね。