ほぼ4ヶ月ぶりの新刊。
今川氏の家督相続の行方、そして所領の荏原の惨状、共に新九郎にとっては頭の痛い状況が続いています。
特に荏原は度重なる飢饉で先細りになっている感はあります。
このことが後年、新九郎が東国へ目を向ける伏線の一つとなるかもしれませんね。
京と荏原を行き来する新九郎の周辺では、姉である伊都と、かつての想い人つるが見せた母の顔はとても印象的でした。
当時の家督相続に対する母としての女性の思い入れが上手く描写されているように思いました。
その女性と言えば、ようやく小笠原政清の娘が登場。
容貌には少し驚きましたが、これからの新九郎との関わりが楽しみですね。
そして新九郎は、龍王丸の家督相続のためについに悪事に手を染めることに。
徐々にダークサイドに堕ちつつある新九郎ですが、鎌倉殿の13人の北条義時ほどダークさを感じないのは、まだ生死をかけた修羅場に至っていないからでしょうね。
この「有印私文書偽造」は室町幕府の政所執事を長らく務めてきた伊勢氏らしい謀略ですが、気まぐれな大御所足利義政による詮議までにはまだまだ時間がかかりそうですね。
……と思っていたら義政の夢枕に父普広院殿(第6代将軍足利義教)が化けて出てきたことから事態が一気に動くことに。
義政に対して子の義尚が鬱屈としたものを抱いている様子でしたが、義政もまた父義教に対して同様の思いを無意識に抱いていたのかなとは思いました。
次回はいよいよ今川氏の家督相続がひとまず決着へ。
これからさらに、新九郎の東国での描写が増えていくことにはなりそうです。