やね日記

或る大阪在住Mac使いの道楽な日々

新九郎、奔る! 第14巻と昭和天皇物語 第13巻

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新九郎、奔る! 第14巻

表紙は仲睦まじい新九郎とぬえ。
ようやく新九郎は幕府奉公衆小笠原政清の娘ぬえと結婚しましたが、そもそもぬえが新九郎の家に馴染んでいたので、気がついたら祝言を上げていたという感じでした。
祝言までの過程で、主君である将軍義尚と佞臣の傍若無人ぶりも描かれていて、幕府内の人間関係も垣間見える描写がなされていたのはさすがだと思いました。

幕府内の関係と言えば、奉公衆と奉行衆の対立や将軍義尚と大御所義政との緊張関係もなかなかの描写でした。後者については大御所の出家で一旦は決着がつきましたが、その際の大御所の決断が堀越公方、ひいては東国の情勢を動かすことになったのには歴史のダイナミズムを感じましたね。

そして、いよいよ史実通りに太田道灌が退場。
これまで本作品では扇谷定正と道灌の関係が深かったので、「決裂」をどう描くのかなと思っていたのですが、最後はそう来たかと思いました。
まさに「泣いて馬謖を斬る」ですが、その後の扇谷上杉家を考えると早計だったとは思いましたね。

ただ、太田道灌の横死は、今川家のお家騒動に介入している新九郎にとっては有利に働くことになりました。
次巻からは、いよいよ今川家のお家騒動の完結編が始まりますが、新九郎がどのような戦働きをするかに注目したいと思っています。

昭和天皇物語 第13巻

8月に刊行されていましたがようやく購入。
冒頭は様々な人物に大命降下を行っても陸軍の抵抗で内閣の不成立が続き、苦悩する昭和天皇が描かれていました。
そして、いよいよあの近衛文麿公が総理に就任。
公家の筆頭にして藤原氏嫡流である近衛公爵家の当主であり、世論の期待が寄せられていた人物ではありましたが、昭和天皇近衛文麿人間性に一抹の不安を持っているような感じでした。
その不安は残念ながら的中してしまいますが。

その後、盧溝橋事件の発生により日中戦争が勃発。一部の陸軍軍人による確信犯的な戦争遂行により、戦線は一気に中国各地へ拡大することに。
海軍に関しても描写がありましたが、陸海軍とも予算を多く取るために無用の師(いくさ)を望んだのかという感想を持ちました。和平工作が失敗したのもその辺りの事情があったのかなと思います。
この陸海軍の行動原理が、無秩序な戦線拡大の果てに破滅をもたらしたのかもしれませんね。

個人的に注目しているのは米内光政の登場と鈴木貫太郎・タカ夫妻の再登場ですね。
米内光政はこれからの海軍の軍政を担う重要人物ですが、単なる英米派軍人だけにとどまらない描写に期待をしています。
そして鈴木貫太郎・タカ夫妻ですが、孤立を深め疑心暗鬼になっている昭和天皇にとって、今後において頼みとする数少ない人物であると思います。
タカは久しぶりに昭和天皇と面会していますが、鈴木貫太郎がいつ昭和天皇と再び接点を持つようになるか。
その日を楽しみに待ちたいと思います。